私は子どもの頃に読んだ太宰治の短編小説「走れメロス」が好きです。
もちろんこんな極端な場面に出会うことは一生ないと思いますが、約束を果たすこと、人を信頼することの大切さや意味をこの小説から学びました。
メロスは最終的に約束の時間に間に合い、人を信じることのできなかった冷徹な王様の心をも動かしました。
約束を守ることが人の信頼を生むということを表していると思います。
メロスの道中は決して平坦な道のりではありませんでしたが、自分を信じて待つ親友のために必死に駆けていきます。
約束を守れない言い訳を探すのではなくて、何が何でもやり遂げるという強い意志も大切なのだと思います。
アメリカで研修をしていた時、人間関係で一番大切なのは信頼だと強く感じました。
見ず知らずの日本人がいきなりチームにやってきて、強くなるための秘訣を教えてくれと言われたところで、本当のことを教えてもらうためには信頼しかありません。
ただ、信頼というものは一朝一夕で築けるものではなく、毎日の積み重ねで築いていくものだと思います。チームの懐に飛び込み、相手の気持ちを考え、人として当たり前の行動を誠実に積み重ねることで、少しずつチームの皆さんとの距離が縮まっていったように思います。
私たちは日々小さな約束に囲まれています。
集合時間や書類の提出といった時間的な約束もありますが、頼まれた仕事を期待された水準でこなすことも約束だと思います。
アメリカでお世話になったホストの方には「あなたは待ち合わせの時間をちゃんと守るから信頼できる」と言って、とても親切にしていただきました。
待ち合わせの時間を守る、なんてことはごくごく当たり前のことではあるのですが、そんな小さな約束でも何度も積み重ねることで大きな信頼につながるんだと知りました。
勝負の世界においても「約束」は存在すると思います。
いついつまでにこのタイムで走ろう、この大会で勝とう、それは他の誰でもなく自分自身との約束です。
「この距離を何秒で走ろう」「この技術を身につけよう」
毎日の練習の中での目標をクリアしていくというのは自分との約束を守っていることと同じなのではないでしょうか。
その約束の積み重ねが自分自身への信頼を生み、自信につながるのだと思います。
それがいわゆる「練習を自信に変える」ということなのかなって思います。
どれだけ妥協せずに継続して、目標、すなわち自分との約束に向かって全力で走り続けることができたか。
その日々がスタートラインに立った時の大きな自信になるんだと思います。
今年はリオデジャネイロ五輪の年です。
私たちのチームもその舞台を目指し、一冬乗り越えてきました。
選手も私もこのシーズンに向けて誓った目標があります。
その約束が果たせるよう、私も選手とともに必死に走っていこうと思います。
【本日の日没】
田んぼと夕焼けの組み合わせ。私の大好きな風景です。